乳歯が抜けるのが早いとどうなる? 原因や歯並びへの影響は?
「幼稚園や保育園のお友だちはまだ乳歯が抜けていないのに、うちの子だけ乳歯が抜け始めている」というとき、親御さんとしては心配になりますよね。実際に乳歯が抜けるのが早い場合、歯並びや虫歯など、歯の成長への影響はあるのでしょうか?
ここでは乳歯が抜ける時期が早いときに考えられる原因・理由や、歯並びへの影響をご紹介します。さらに、お子さんの乳歯が早く抜けたときに保護者の方が知っておきたい注意点についても解説します。
乳歯はいつ抜ける? 標準的な時期
乳歯は、お子さんが6歳前後の時期に抜け始めることが多いです。
大人の歯である「永久歯」は、お子さんが生まれてから5年ほどかけて顎の中に育っていきます。
この永久歯が育つまでの歯が「乳歯」であり、永久歯が成長したあとは初めに下の前歯が抜け、上の前歯が抜け……というふうに、順番に歯が抜けていきます。
そうして抜けた場所から、永久歯が徐々に生えそろってくるのです。
ただし「6歳臼歯」「12歳臼歯」などの奥歯については、もともと乳歯が存在しません。
よって6歳臼歯は6歳ごとにもともとあった奥歯(第二乳臼歯)より奥へ生え、12歳臼歯は12~13歳ごろに顔を出す……という仕組みになっています。
乳歯がいつ抜けるのか知りたいという方へ向け、標準的な生え変わりの時期について表にまとめています。
ぜひ一度ご参考になさってください。
乳歯の名前 | 上あごの生え変わり時期のめやす | 下あごの生え変わり時期のめやす |
---|---|---|
乳中切歯(前歯) | 7~8歳ごろ | 6~7歳ごろ |
乳側切歯(前歯の横の歯) | 8~9歳ごろ | 7~8歳ごろ |
乳犬歯 | 11~12歳ごろ | 9~11歳ごろ |
第一乳臼歯 (いちばん手前の奥歯) |
9~11歳ごろ | 10~12歳ごろ |
第二乳臼歯 (手前から2つめの奥歯) |
9~12歳ごろ | 11~13歳ごろ |
乳歯が早く抜けると歯並びにどんな影響がある?
世間では「乳歯が抜けるのは遅いほどいい」と言われることも多く、虫歯や歯並びに影響があるのでは? と不安になる場合もあるでしょう。
結論から申し上げますと、心配しすぎる必要はありません。
先ほどご紹介した「生え変わりの時期」というのは、あくまでも平均的な目安。実際にはお子さんによって個人差がかなり大きいため、4歳で抜け始めるお子さんもいれば、9歳ごろに初めて乳歯が抜けた、というお子さんもいるのです。
歯や顎の成長が早いと乳歯が早く抜けやすい
実は、永久歯の準備が整っていたり、顎の成長が早かったりするお子さんは、比較的生え変わりが早い傾向にあります。
さらに、赤ちゃんの時期に乳歯の生え始めが早かったお子さんは、早めの時期に生え変わり始める傾向が強いです。
これらに当てはまるお子さんは「成長とともに自然に乳歯が抜けていて、かつ抜けるタイミングがたまたま早かっただけ」ということになります。よって、そこまで心配しなくてもよいでしょう。
顎がしっかり育っていれば歯並びへの影響は心配しなくていい
生え変わりが早い場合であっても、顎さえ育っていれば歯並びに影響はありません。
顎が成長していて永久歯が生えてくるのに十分な“土台”があれば、乳歯が抜けるのが早くても歯並びが整いやすくなります。また乳歯が抜けた時点で顎が小さくても、永久歯の成長とともに顎が大きく成長すれば、整った歯並びになりやすいです。
顎の成長度合いを見るには、歯科の定期検診を受けることが大切です。
乳歯の抜け始めの時期から、顎や永久歯の育ち具合、乳歯の状態を歯科で定期的にチェックしてもらいましょう。
なお、乳歯の抜ける早さに対し顎の成長が追い付かない場合は、顎を広げる矯正(床矯正)などの対策もできます。お子さんの顎の成長が気になる方は、歯科医に相談してみて下さい。
乳歯が抜けるのが早い場合に注意したいポイント
乳歯が抜ける時期には個人差がありますが、抜けるのが早い場合に気をつけたいのが「虫歯」です。また抜けた歯の様子がなんとなくいつもと違ったり、乳歯が抜けても永久歯が生えてこなかったりする場合は歯科に相談することをおすすめします。
仕上げ磨きをていねいに
乳歯が抜けて生えてきた永久歯は、やわらかくざらざらしていて、酸に弱いのが特徴。
要するに「汚れが付きやすく虫歯になりやすい歯」ともいえるのです。
また生えかけの永久歯と乳歯が混在している時期(混合歯列期)は歯に凸凹があり、磨き残しが生じやすい状態です。
歯に付着した汚れは、虫歯の原因になってしまいます。
お子さんの歯の生え変わり時期には、毎日しっかりと仕上げ磨きを行いましょう。
歯の横や奥、噛み合わせの部分は磨き残しやすい部分なので、ていねいに磨くことを心がけてくださいね。
また、おやつのダラダラ食べをせず、決まった時間に一定量をあげる習慣作りも大切です。
抜けた歯の歯根をチェック
乳歯が抜けるのが早いと感じたら、いちど抜けた歯をチェックしてみて下さい。
抜けた乳歯の根っこ(歯根)が四角くなっている場合は、永久歯が成長してくるとともに乳歯の根っこが溶けている証拠。正常な成長による生え変わりなので、心配ありません。
一方、4歳までに乳歯が抜けて、かつ抜けたあとの乳歯の根っこ全体が「細長い三角形」になっている場合。
このようなケースでは「低ホファスターゼ症」という病気の可能性があり、注意が必要です。
低ホファスターゼ症の場合は手足が曲がる、よく転ぶなどの症状が現れることが多いです。ご不安な場合は、抜けた歯を持参したうえで歯科医に相談してみることをおすすめします。
乳歯が抜けたあと永久歯が生えてこない場合は?
乳歯が抜けてから永久歯が出てくるまでには、3ヶ月前後かかります。
しかし、お子さんによっては「半年ぐらい経つけれど永久歯がなかなか出てこない……」という場合もあるでしょう。
この原因としては「歯茎が厚い」「先天的に永久歯がない(先天性欠如)」「通常より多い本数の歯ができてしまっている(過剰歯)」などが考えられます。
歯茎が厚い場合は、レーザー等を使って歯茎を切り、永久歯が顔を出しやすいようにすることもできます。
また歯の本数については、レントゲンを撮ってもらえば一目瞭然です。
いずれの場合も、まずは歯科に相談し、その後の対処や治療について相談してみてくださいね。
抜けた乳歯は「再生医療」に使える!
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。本記事により「乳歯が抜けるのが早いけれど、大丈夫なの?」というご不安が解消されれば幸いです。
最後に、抜けたお子さんの乳歯が「再生医療」に使えるというお話をご紹介します。
再生医療とは、傷ついた臓器や骨、筋肉などを再生し、移植するという治療法です。
この再生医療の肝となるのが「幹細胞」です。抜けた乳歯の中には幹細胞の一種、「歯髄細胞(しずいさいぼう)」が含まれています。この歯髄細胞を凍結し、長期保管することで、将来の再生医療に利用できるのです。
乳歯からは良質な歯髄細胞が採取できます。歯髄細胞は増殖能力も高く、硬い歯に守られているため遺伝子にキズが付きにくいメリットもあります。また、自然に抜けた乳歯ならばお子さんの体への負担もありません。
通常、抜けた歯は保管される方が多いかもしれません。一方、歯髄細胞を冷凍保管していれば、将来の病気やケガの治療の選択肢を広げてくれる可能性もあります。
お子さんの乳歯の使い道として、「歯髄細胞バンク」のご利用も、選択肢の一つとしてご検討されてみてはいかがでしょうか。